【2025年介護保険部会】居宅介護支援事業所の管理者要件は見直される?主任ケアマネ・経過措置を整理

2025年12月22日(月)に開催された社会保障審議会 介護保険部会(第132回)では、次期介護保険制度改正(2027年度以降)を見据えた「とりまとめ」に向け、論点が幅広く整理されました。会議日時と資料一覧は厚生労働省の公式ページで確認できます。


厚生労働省|第132回 社会保障審議会 介護保険部会(資料ページ)


この記事の結論(先に要点)

  • 「管理者要件が変更される」と決まったわけではありません。
  • 一方で、部会資料(意見案)では「居宅介護支援事業所の管理者要件は、引き続き介護給付費分科会で検討」という整理が示され、正式な検討テーマとして位置づけられました。
  • 現場の課題(人材不足・負担増)を踏まえ、今後は“厳格化”というより、制度運用の現実性(地域差・規模差)を踏まえた整理が焦点になりそうです。


居宅介護支援事業所の管理者要件(現行)

居宅介護支援事業所では、原則として管理者は主任介護支援専門員(主任ケアマネ)であることが求められています。制度改正の経過措置として、一定条件のもと主任資格がなくても管理者を継続できる取り扱いがありましたが、経過措置の期限(2027年3月末)が近づいていることが、議論が再燃する大きな背景です。

ポイント:「主任ケアマネを管理者に置く」という“枠組み”自体が直ちに崩れると決まったわけではありません。論点は、経過措置終了を前提にすると、現場が回らなくなる地域・規模が出る可能性がある点にあります。


なぜ今、管理者要件が論点になるのか

部会全体の議論は多岐にわたりますが、ケアマネ事業所に直結する文脈としては、次の課題が重なっています。

  • 慢性的な人材不足(ケアマネの担い手確保が難しい)
  • 主任ケアマネに求められる役割の肥大化(実務+指導+管理+地域連携等)
  • 地域差(都市部と中山間・人口減少地域で、確保できる人材層が異なる)
  • 質の担保(要介護者の生活を支える中核機能として、専門性を下げられない)

つまり「要件を緩める/維持する」という二択ではなく、質を落とさずに運用可能な設計にどう着地させるかが中心テーマになっています。


介護保険部会で示された整理(第132回の位置づけ)

第132回は、結論を確定させる場というより、とりまとめ(意見案)として論点を整理し、次の検討につなげる段階です。その中で、居宅介護支援事業所に関して注目されたのが、次の整理です。

居宅介護支援事業所の管理者要件についても、引き続き介護給付費分科会で検討していくことが適当

この一文が意味するところは明確です。

  • この時点で「要件を変える」と決めたわけではない
  • 一方で“検討事項として残す”ことを、部会として明示した

(根拠:意見(案)本文中で、主任ケアマネの位置付けや役割分担の課題に触れた上で、管理者要件は介護給付費分科会で継続検討と整理)


資料1|介護保険制度の見直しに関する意見(案)(PDF)

出典:資料1「主任ケアマネジャーの位置付けの明確化」付近にて、役割分担の課題(管理業務・財務管理等と育成等の役割分担)に触れつつ、「居宅介護支援事業所の管理者要件についても引き続き介護給付費分科会で検討」と整理(第132回配布資料)。


今後の見通し|この方向で進みそうなポイント

現段階は「検討する」整理にとどまりますが、資料の書きぶり(課題の置き方)から見ると、今後の議論は次の論点に収れんしていく可能性があります。

1)「管理者=主任必須」を軸にしつつ、地域・規模への配慮

制度の理念としては質担保が前提です。そのため、骨格は維持しながらも、人材確保が難しい地域や小規模事業所に対して、一定の運用措置(要件の適用の仕方)をどう設計するかが論点になり得ます。

2)主任ケアマネの役割を“名義”ではなく“質の担保・育成”に寄せる

資料では、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの役割分担、ICTの活用、業務負担の整理など、ケアマネが本来業務(ケアマネジメント)に注力できる環境が繰り返し語られています。主任に「管理の箱」だけを背負わせるのではなく、育成・支援・連携の中核機能として整理していく方向が議論されやすいと考えられます。

3)要件論よりも「体制・育成・連携」をどう評価するかへ

管理者の資格要件だけを動かすと、質低下の懸念が残ります。そこで、事業所としての支援体制(相談・指導・研修・連携)をどう担保し、どう評価するかへ議論が広がる可能性があります。


「ケアプラン有料化」と管理者要件は別論点

「ケアプラン有料化」という言葉が独り歩きしがちですが、少なくとも第132回の整理は、管理者要件の議論と、給付と負担(利用者負担)の議論は別の棚として扱うのが適切です。

  • 管理者要件:人材確保・負担・質担保のバランスが焦点
  • 給付と負担:制度の持続可能性・公平性が焦点

混同すると不安を煽る情報に引っ張られやすくなります。論点の棚を分けて追うことが重要です。


事業所が今から備える実務ポイント

制度がすぐ変わるわけではありませんが、2027年3月末の経過措置期限が視野に入る以上、居宅介護支援事業所としては「準備して損がない」論点があります。

(1)主任ケアマネの育成計画を“年単位”で前倒し

主任取得には実務要件・研修機会の確保が必要です。候補者を「複線化」し、1名に依存しない設計(次の管理者候補・育成担当候補を複数)を持つことが、最も堅い対策です。

(2)管理業務の棚卸し(誰が何を担うか)

管理者に集約しがちな業務(労務・請求管理・教育・外部連携・内部統制等)を棚卸しし、事務・リーダー・主任・管理者の役割分担を明文化しておくと、将来の制度変更にも適応しやすくなります。

(3)ICT・標準化で「ケアマネジメントに戻す」

資料でもICT活用や業務効率化の必要性が繰り返し示されています。記録・情報共有・帳票の標準化を進め、ケアマネが本来業務に集中できる運用へ寄せることは、制度議論の方向性とも整合します。


よくある質問

Q1. 管理者要件は「見直し決定」なのですか?

A. いいえ。第132回の段階では、「引き続き介護給付費分科会で検討」という整理であり、変更の確定ではありません。

Q2. 2027年4月から突然、主任がいないと指定取消になりますか?

A. 現時点でそこまで断定できません。経過措置期限が論点になっているのは事実ですが、制度設計は今後の検討事項です。まずは最新の分科会の議論を追い、都道府県の運用(指定権者の見解)も確認していくのが安全です。

Q3. 今回の記事で一番大事なポイントは?

A. 「変更決定」ではなく“正式に検討レーンに乗った”ことです。噂ではなく、公式資料に基づいて論点の棚を分けて追うのが重要です。


まとめ

  • 第132回介護保険部会では、居宅介護支援事業所の管理者要件について「引き続き介護給付費分科会で検討」と整理された
  • 現時点で要件変更が決まったわけではない
  • ただし、経過措置期限(2027年3月末)が迫る中、数年単位で制度・運用が動く可能性は高い
  • 事業所としては、主任育成の前倒し/役割分担の明確化/ICT・標準化で備えるのが現実的

※本記事は、厚生労働省「第132回 社会保障審議会 介護保険部会」資料(2025年12月22日)を基に、居宅介護支援事業所に関係する論点を要約・整理したものです。制度改正は検討中の事項が多いため、今後の資料更新により内容が変わる可能性があります。