第10期介護保険事業計画に向けた見直しとは?居宅介護支援事業所が押さえたいポイント

第10期介護保険事業計画に向けた見直しのポイントを解説するイメージ(居宅介護支援事業所・地域包括支援センター連携・身寄りのない高齢者支援・人材確保と生産性向上)

厚生労働省は、令和8年3月9日に行われた第134回社会保障審議会介護保険部会において、第10期介護保険事業計画に向けた基本指針の見直しに関する資料を公表しました。

今回の資料は、すぐに制度改正が確定したという性質のものではありませんが、今後の市町村計画や都道府県計画の方向性を考えるうえで重要です。特に、居宅介護支援事業所にとっては、地域包括支援センターとの役割分担介護予防ケアマネジメントへの関与複合課題を抱える高齢者への支援人材確保と生産性向上といった論点が見えてきました。

本記事では、資料のうち居宅介護支援事業所に関係するポイントに絞って、実務目線で整理します。介護保険制度の全体像を先に確認したい方は、介護保険の基本解説ページもあわせてご覧ください。

今回の資料は何を示しているのか

今回示されたのは、第10期介護保険事業計画の作成に向けた基本指針の見直しイメージです。市町村や都道府県が今後どのような観点で介護サービス量や地域支援事業、地域包括ケアの体制整備を考えていくか、その方向性が示されています。

居宅介護支援事業所にとって重要なのは、単に「ケアプランを作る事業所」としてではなく、地域包括ケアシステムを支える現場の中核としての位置づけが、より強く意識されている点です。特に、地域課題の把握や多職種連携、地域ケア会議への関与など、地域全体を支える視点が一段と求められています。

居宅介護支援事業所に関係する主な論点

1.介護予防ケアマネジメントの直接実施が論点に入っている

資料では、地域包括支援センターの体制整備に向けた取組として、居宅介護支援事業所による介護予防ケアマネジメントの直接実施等について言及されています。

これは、地域包括支援センターの業務負担や相談件数の増加を踏まえ、介護予防支援・介護予防ケアマネジメントの在り方を見直していく流れの中で出てきた論点です。今後の制度設計次第では、居宅介護支援事業所がこれまで以上に予防領域へ関与する場面が増える可能性があります。

現時点で「必ずこう変わる」と断定はできませんが、少なくとも管理者や主任介護支援専門員は、地域包括支援センターとの連携体制や、予防ケアマネジメントを担う場合の業務フロー、担当者配置、書類整備を今のうちから確認しておくことが重要です。

2.地域包括支援センターの機能強化と連携の重要性が増している

資料では、地域包括支援センターについて、事業評価指標も活用しながら機能強化を図る重要性や、業務継続に向けた計画等の策定・見直しにも触れられています。

居宅介護支援事業所にとっては、包括が強くなるか弱くなるかという話ではなく、むしろ包括と居宅がどう役割分担し、どう補完し合うかが問われる局面です。地域で困難ケースが増えるなか、相談の入口を包括だけに集約するのではなく、居宅側も地域の相談支援機能の一部を担う姿勢が求められます。

ケアマネジャーの役割そのものを確認したい方は、ケアマネジャーの仕事内容の記事も参考になります。

3.身寄りのない高齢者への支援が、居宅の実務上さらに重要になる

今回の資料では、頼れる身寄りがいない高齢者等に対する相談窓口の明確化や、そうした方々への支援に資する地域ケア会議の活用推進が示されています。

身寄りのない高齢者が抱えやすい課題としては、生活支援、財産管理、身元保証、死後事務などが挙げられています。これは、居宅介護支援事業所が日常的に直面する「介護保険サービスだけでは解決しない問題」と重なります。

つまり今後は、単にサービス調整をするだけでなく、地域のインフォーマル資源、司法・医療・行政との接続、地域ケア会議への課題提起まで含めて支援できる居宅介護支援事業所が、地域でより重要な存在になります。

4.地域ケア会議で「個別課題を地域課題に変える力」が重要になる

資料では、地域ケア会議について、多職種協働による個別ケースの検討を通じて、ケアマネジメント支援、地域ネットワークの構築、地域課題の把握につなげる役割が改めて示されています。

居宅介護支援事業所の現場では、「この利用者だけ特別に困っている」のではなく、同じような課題が地域で繰り返されていることが少なくありません。身寄りがない、通院支援が足りない、入退院調整が難しい、生活支援の担い手が不足している、といった問題です。

このような課題をケアマネジャー個人の努力だけで抱え込むのではなく、地域ケア会議に乗せて共有し、社会資源の見える化や新たな支援体制づくりにつなげていくことが、今後ますます重要になります。

5.人材確保・生産性向上・経営改善支援も無視できない

基本指針の見直しイメージでは、地域包括ケアシステムを支える人材の確保や介護現場の生産性向上に加え、経営改善支援も記載事項として示されています。

居宅介護支援事業所は、他サービスに比べても人材確保が難しく、主任介護支援専門員の配置や後継育成も大きなテーマです。今後は、採用だけでなく、業務の標準化、ICT活用、記録や情報共有の効率化、教育体制の整備まで含めて「持続可能な運営体制」がより問われると考えられます。

居宅介護支援事業所として今から備えたいこと

  • 地域包括支援センターとの連携ルートを整理する
  • 介護予防支援・介護予防ケアマネジメントに関する対応可能範囲を確認する
  • 身寄りのない高齢者支援で使える地域資源を一覧化する
  • 地域ケア会議に持ち込む地域課題を事業所内で蓄積する
  • ケアマネジャーの負担軽減につながるICTや業務整理を進める

特におすすめなのは、「困難事例一覧」ではなく「地域課題一覧」として整理することです。個別ケースの悩みを、通院支援不足、身元保証の問題、独居高齢者支援、医療連携の課題などのテーマ別に分けておくと、地域ケア会議や行政との協議にもつなげやすくなります。

まとめ

今回の厚労省資料で見えてきたのは、今後の居宅介護支援事業所に対して、ケアプラン作成だけでなく、地域の相談支援機能の一端を担う役割介護予防領域への関与複合課題への対応力地域課題を可視化する力がより求められていく可能性です。

制度改正の詳細は今後さらに議論されますが、居宅介護支援事業所としては「何が決まるかを待つ」だけでなく、今のうちから地域包括支援センターや多職種との連携、予防領域への備え、地域課題の整理を進めておくことが大切です。

今後もすずみなでは、居宅介護支援事業所の運営に関わる制度改正や通知情報を、実務に落とし込んで分かりやすく整理していきます。